2015年4月29日水曜日

ブティの布 バチストについて

*追記 ア・ラ・マニエール・ダンタンにてコットンバチストのお取り扱い始めました。

ブティでは主にコットンバチストと呼ばれる平織りのとても薄いコットンの布を使います。
おもにヨーロッパで作られている生地です。
ワークショップでお配りするキットにはコットンバチストを入れています。
私自身は作品によってはバチスト以外の布を使うこともあって、その場合は綿ローンを使います。
生徒さんの中には手芸店で手に入るものでブティを作りたい方ももちろんいらっしゃいますので、その場合は綿ローンをおすすめしています。

「バチスト」という呼び名はどこかの一企業が使用している登録商標ではなく「シャンタン」とか「モスリン」といったような、布の種類と考えるとよいと思います。
なので、バチストといってもいろいろな品質のものがあります。
厚さや針通り、白の色合いなどなど、ただの薄い白い布とはいえ生産者によってかなり違いがあり、ロットによっても差があります。

バチストとはもともとはリネン(亜麻)で織られた生地です。
現在では、麻、綿、シルクやポリエステルのバチストもあります。
カンブレ(Cambrai)というフランス北部の町でバチストは初めて作られました。
カンブレの観光局のウェブサイトにバチストについてのページがあります。
Office de tourism de Cambrai

その内容に触れる前にちょっと補足
リネン(亜麻)は人類最古の繊維といわれ、フランスの北からベルギー、オランダのあたりは良質な亜麻の生産地で、中でもフランス北部のものは特に品質が高いと言われます。
一方、綿織物ですが、綿花から綿織物を作る技術はもともと古代インドが起源。
十字軍とともにヨーロッパにもたらされましたが(イタリアやスペインにはローマ帝国時代に東方からすでに綿織物がもたらされていたようです)、本格的にヨーロッパに普及したのは16世紀以降です。

話は戻って、カンブレ観光局のページにどういったことが書いてあるかというと・・・
<<バチストと呼ばれる繊細なリネンの生地は、カンブレに富と名声をもたらした。
その繊細さと品質によりヨーロッパ中の宮廷、とりわけフランスとイギリスに輸出されることとなった。
バチストはカンブレの織工であったBatiste(バチスト)によって1300年ごろに発明された。
ちょうどイギリスとの100年戦争の時代、ウールの輸入が禁止されたため、この地域で栽培される亜麻の織物が発展。
職人たちは申し分のない麻糸を紡ぎ、それで織物を作り、エスコー川の水で洗い白くし、産地と品質を保証する刻印をした。
バチストはtoilette, fine batiste, atramiche(*), linon(ローン) と呼ばれることもある。
バチストは綿織物の登場により19世紀に消失した。>>
* atramiche(昔のフランス語で繊維関連の語のようです、おそらく布の種類)

ここで疑問が。
え?バチストってローンなの?
確かにかなり似てますよね。
ローンのほうがバチストよりも目が詰んでいて、両者は違うものですが、英語圏の布関連のウェブサイトなんか見てると、
Batiste or Japanese lawn なんて書いてあることがあります。
日本製のローンがバチストとして売られてるんですね。
単に高品質の平織りのコットンのことをバチストと呼ぶこともあるようです。
日本製のローンはかなり品質が良いので、もしフランスで簡単に手に入る状況があったら、これでブティを作る人もいるだろうなと私は想像します。(よい物、よい方法があるならやり方を変えるということにフランスではあまり躊躇がないので)
英語圏から個人輸入する場合、バチストを注文したつもりが日本製のローンだったということにもなりかねないので注意が必要です。

そしてそして、キャンブリックについて調べると、
Cambric = Batiste と書いてあるのをよく見かけます。
キャンブリックはバチストの生産地であるカンブレ(Cambrai)のフランドル語から名前が付けられたようです。
同じものがフランスでは人名からバチストという名前になり、イギリスでは地名からキャンブリックとなったというわけですね。
バチストが初めて作られたのが1300年ごろ、キャンブリックとしてイギリスに伝わり、その後イギリスで変化を遂げたであろうことを考えると、
必ずしもキャンブリック=バチストというわけではなく、
キャンブリックとバチストはニアリーイコールといったほうが正しいと考えます。
商業的にバチストは刺しゅうなどに使われる繊細で薄い布、それに対し、キャンブリックは比較的厚みのあるものと区別されることが多いようです。
バチストに比べるとさっくりした雰囲気なので、素朴なデザインのブティを作りたいときや、厚さを利用して強度が必要なブティのバッグなどを作るときに使うといいかもしれません。

あと、Batiste de lawnという表記もよく見かけます。
バチストなの?ローンなの?と思ってしまいますが、この場合「非常に薄い布」という意味でBatisteという表記が用いられています。
タナローンと同じくらいの品質の生地のことをBatiste de lawnと表記してあることが多いようです。
タナローンはリバティー社がシルクの手触りと光沢をコットンで表現するために独自に開発した高品質のローンのことですが、タナローンはリバティ社の登録商標(だと思うたぶん)。したがって、タナローンと同じくらいの高品質のローンですよ!というためにこのような紛らわしい表記になるのだと考えられます。

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